複雑な財務状況を乗り越え、3,000万円の資金調達に成功した事例

資金調達は企業の成長において非常に重要ですが、財務状況が複雑であるとその道のりは一層困難になります。特に、複数の関連会社があり、互いに債権債務関係にある場合(例えばグループ会社間でお金の貸し借りがあったり、会社から社長個人にお金を貸している場合)は、融資を受けることは容易ではありません。
なぜこれが問題になるかというと、金融機関が会社の正味の資産の把握をする事が困難であったり、A社のために融資したお金が、他のグループ会社や社長個人のために使われるのではないかという懸念を持たれたりするからです。
しかし、企業の財務状況が複雑であっても、その状況を詳細かつ明確に説明することができれば、金融機関の理解を得て融資を受けることが可能なケースもあります。
今回は、そんな複雑な財務状況を克服し、見事融資を成功させた事例を紹介します。

事例の登場人物と背景

この事例の主人公は、親会社をもつ子会社の社長、Aさんです。
親会社は主に資産管理を行い、子会社は会員サービスを展開していました。

この企業は、財務関係が非常に複雑であったため、金融機関からは決算書の評価ができないと難色を示されていました。
具体的には、以下のような問題があったのです。

  • 親会社は管理会社の役割を持ち、 親会社で役員報酬を支払い、子会社では役員報酬を除いた経費計上をしている。
  • 親会社に多額の代表者貸付金がある
  • 実態としては子会社が負担すべき経費を親会社が負担し計上しているなど、費用の負担と計上が明確に分かれていない
  • 管理会社と合わせると実質的には赤字であった。

このような背景から、金融機関では融資が難しいとされていました。

融資を支援した方法

私たちは、この企業に対して以下の方法で融資支援を行いました。

  1. 決算書の複雑さの解消
    企業の財務状況を明確にするため、必要な資料を提出するようアドバイスし、担当税理士の協力を仰ぎました。
    具体的には、代表者貸付の詳細(個人で購入した有価証券を売却時の利益を個人に移した際の利益、社宅費用など)を説明し、法人と個人の資産が混在している点を明らかにしました。

  2.  法人と個人の一体性解消計画の策定
    法人と個人の資産を明確に分ける計画を作成し、それを金融機関に説明しました。
POINT

「法人と個人の一体性解消とは?」

法人と個人の一体性解消とは、企業の財務活動において、法人(会社)と個人(代表者や役員など)の資産や取引を明確に区別し、独立した形で管理することを指します。これにより、財務の透明性が高まり、金融機関からの信頼を得やすくなります。具体的には以下のような対策があります。

  • 資産の区別
    法人名義の資産と個人名義の資産を明確に分け、会社の資産を個人の資産と混同しないようにする。例えば、会社のお金を社長個人への貸付金として流用しないようにする。
  • 経費の分離
    法人の経費と個人の経費を分けて管理し、個人的な支出を法人の経費として計上しないようにする。例えば、社長の個人的な出費を会社の経費として計上しないようにする。
  • 取引の明確化
    法人と個人の間の金銭的な取引を明確にする。例えば、事業に必要な支出があった際に領収書を保管しておく。

※代表者貸付金は、会社の経費に計上できない支払い(旅行や買い物など、事業には関係ない社長個人の支出)を会社のお金で支払う場合に発生しますが、その他の例として、会社の経費を社長個人が支払い、その後建て替え経費の精算をする際に、領収書があれば経費計上できるのですが、領収書がない場合は現預金の支払いはあるものの経費計上できないため、それが代表者貸付金として計上されてしまうというものもあります。

  1. 専門家の協力
    Aさんの顧問税理士にも協力を仰ぎ、提出が必要な資料の用意や、金融機関との面談時に数字の説明をしてもらうことで、社長一人では難しい説明を補完してもらうよう依頼しました。

支援の結果

上記のように、 懸念されていた課題に応えることで、結果的にAさんの会社は3,000万円の調達に成功しました。当初の希望金額は下回ったものの、複雑な財務状況を解消し、明確に伝えることができなければ、そもそも調達することすらできなかったと言えるでしょう。

今回の事例から学べること

この事例から学べる重要なポイントは、会社の財務状況が複雑でも、状況を明確に伝えることと、課題に対しての具体的な改善計画を作ることです。さらに、それを実行する確固たる意思と、担当税理士がサポートする旨を金融機関にアピールする事で、融資を受ける可能性を高めることができるということです。

また、今回の支援には専門家の協力が必要不可欠でした。企業の財務状況を明確にするための資料の提出は、社長1人では対応できないほどの量でした。加えて、決算書の数字に関する詳細な説明は、担当税理士の協力なしではとても困難であると言えます。
そのため、豊富な知識と経験を誇る専門家からの支援を活用することが大切になります。

今回の事例から、企業が専門家から適切なサポートを受け、金融機関との信頼関係を築くことができれば、複雑な財務状況でも融資を受けることが可能であることが理解できたと思います。

私たちは、計画書の作成支援の他にも、金融機関との関係を築くためのお手伝いをしています。融資をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

※本コラムは実際にセブンセンスグループで支援したケースをもとに作成していますが、企業が特定されることを防ぐため、趣旨が損なわれない範囲で一部架空の内容を交えています

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