種類株式について、その概要とスタートアップがどのように活用しているかを説明していくシリーズ。
第三弾は議決権制限株式です。
前回までで、優先配当株式、優先残余財産分配権付株式の話をしてきました。
これらは、普通株式よりも有利な株式を設計することによって、株式の魅力を高めている種類株式です。
そして、魅力を高めているということは、価値が高いということでもあります。
価値が高いということは、同じ出資額でも、渡す株数は少なくてすむ、つまり議決権を奪われにくい株式であるとも言えるわけです。
議決権は株主総会で行使して、会社の重要事項を決定できる権利ですから、特にスタートアップにおいてはなるべく創業者である経営者に集めておきたいところです。
これを直接的に達成するのが、今日お話しする議決権制限株式です。
議決権制限株式とは
議決権制限株式とは、株主総会における議決権を制限した株式です(ああ、今日もまたトートロジー…)。
つまり、議決権制限株式を持っている株主は、株主総会の決議事項の全部または一部について議決権を行使することができません。
議決権が制限されているため、株式としての魅力は低下します。
しかし、スタートアップに投資する投資家の多くは、株主総会で議決権を行使することよりも、スタートアップにのびのび経営をしてもらって、キャピタルゲインのチャンスを獲得することを望むはずです。
(のびのび経営がキャピタルゲインにつながるわけではないのが悩ましいところではありますが…)
また、低下した魅力を補うように、議決権制限株式には優先配当権や優先残余財産分配権を付けることも多く行われています。
P.S.
また受験時代の思い出を一つ。
株式の権利は「自益権」と「共益権」に分けられるといわれています。
自益権というのは、株主個人の利益のための権利のこと。
共益権というのは、株主全体の利益のための権利のことです。
自益権の代表的なものが、利益配当請求権と残余財産分配請求権であり、
共益権の代表が、議決権行使による経営参加権です。
種類株式はこの株主の権利に変更を加えるものと捉えることもできますね。