9つある種類株式もついに7種類目まで来ました。
最近「ファイナンス・トーク見てます」と言っていただくことが増えて、やる気が出てきてます。
さて、今日は、全部取得条項付株式です。
前回は、取得条項付株式。今回は、【全部】取得条項付株式。
全部がついているかどうかの違いですが、その内容は大きく違うので、扱い方に注意です。
全部取得条項付株式とは
全部取得条項付株式は、「株主総会の特別決議によって」会社がその種類株式をすべて回収できる株式です。
前回の取得条項付株式は、一定の事由が発生することで、会社の意思のみで買取が行われましたが、
全部取得条項付株式は、株主総会の特別決議が必要となっている点が、大きな相違点です。
つまり、会社の意思のみでは買取は行えません。
(その他の相違点はほとんどありません)
では、なぜ会社にとって不利な全部取得条項付株式を発行する場面があるのか。
それは、全部取得条項は定款変更によって、事後的に付すことができるためです。
(定款変更は特別決議です)
それにより、少数株主を排除したり、会社再生の場合の100%減資に利用できます。
今回はスタートアップにより関係の深そうな少数株主の排除方法(スクイーズアウト)についてお伝えします😎
全部取得条項付株式の取得によるスクイーズアウトの方法
前提
発行済株式総数 1,000株
(すべて普通株式)
(経営者が900株保有、株主Aが70株保有、株主Bが30株保有)
ステップ① 株主総会で普通株式に全部取得条項を付す旨の定款変更
→経営者が90%保有しているので、定款変更の特別決議は通せる
ステップ② 新普通株式(全部取得条項が付されていない株式)を設ける定款変更
ステップ③ 会社が全部取得条項付種類株式を全部取得することと引き換えに②の新普通株式を交付する特別決議を行う
→交付する株式が、経営者以外は1株未満にするような交換比率とする
→上記の例であれば、種類株式90株ごとに、新普通株式を1株交付するようにする。
→すると、経営者は10株、株主Aは0.78株、株主Bは0.33株となる。
→株主Aと株主Bの保有する1株未満の株を端株(はかぶ)という。
→会社法234条により、端株は金銭に変えることとなっている。
→株主Aと株主Bは、端株に相当する金銭を受け取り、株主ではなくなる(経営者の持ち分を100%に回復できる😎)
いかがだったでしょうか。
全部取得条項が、スクイーズアウトの場面で非常に強力なことがお分かりいただけたと思います。
それでは次回をお楽しみに~。