扇子: 先生!先日ご相談をいただいた方から「自己資金ゼロでも起業できますか?」って質問をいただいたんです。
資本金が1円でも会社を作ることはできると思うんですけど、その後は上手くいくものなんでしょうか?
オオノ先生: 2006年に会社法が変わって、確かに現在では資本金は1円でも会社を作れるようになっていますね。ただ、これがアリなのかどうかなんですけど、結論から言うとあまりおすすめはできませんね…。
資本金
資本金とは、企業が事業を開始するために用意する元手のことを指します。
資本金は会社設立時に株主から出資された金額であり、企業の信用力を示す重要な指標となります。2006年5月の会社法の改正で、最低資本金制度が撤廃されました。
この変更により、1円でも会社を設立できるようになり、起業のハードルが大幅に下がりました。
Contents
1. 手続きが手間になるから
扇子: 具体的にはどんなところがナシなんでしょう?
オオノ先生: そもそもビジネスって、元手となるお金があって、それを何かに投資して、 そこからまたお金を回収していくというサイクルを回すものだと思うんですね。そのための「箱」として会社があるわけです。
ですが、そもそもその会社に自己資金が1円しかないということであれば、投資する元手がないですよね。なので、事業を始めることができないんですよ。
扇子: たしかに、そうですねぇ。
オオノ先生: 事業を始められない会社っていうのは、あまり存在価値がないかなと思うので、やっぱり事業をやるためにはどこかから元手をもってくる必要がありますよね?
それでは、1円で会社を作ってしまったとしたら、どうやって元手をつくるのか?という事になるんですけど、社長が用意したお金を元手にするのであれば、それを会社が借りるという方法か、資本金として出資をしてもらうっていうことが必要になってきますよね。
オオノ先生: 会社が社長からお金を借りるのなら役員借入金になりますけど、資本金にするのであれば増資の手続き が必要になりますから、これは二度手間ですよね。
だったら、設立の段階から自己資金を会社に入れて、それを資本金として会社を設立した方が、事業としてはスムーズに進むんじゃないのかなと思いますよね。
役員借入金
役員借入金は、会社員が資金不足の際に役員から借り入れる資金のことです。
役員借入金は、迅速な資金調達が可能であり、特に緊急時には大変便利です。
また、金融機関からの借入に比べてコストが低く、柔軟な返済条件を設定できるため、企業の財務状況に応じた返済が可能です。
しかし、役員個人の資産がリスクにさらされ、適切に処理しないと税務上の問題が生じる可能性があります。また、役員借入に依存しすぎると、企業の財務健全性が損なわれる可能性があります。
増資の手続き
増資の手続きは以下のステップで行われます。
1.株主総会の招集: 特別決議で増資内容を決定。
2.出資希望者への通知: 募集株式の割り当て先を決定。
3.割り当て通知: 出資金の払い込みを依頼。
4.払い込み完了: 法務局に増資の登記を行う。
5.株主名簿の更新: 新しい株主を記載して手続き完了。
また、これに必要な書類には次のようなものがあります。
1.株主総会議事録: 増資を決議した株主総会の記録。
2.募集事項の決定書: 募集株式の内容を定めた書類。
3.株式申込書: 出資希望者が株式を申し込む際の書類。
4.払い込み証明書: 出資金が払い込まれたことを証明する書類。
5.登記申請書: 法務局に提出する増資の登記申請書。
書類の作成を含めたさまざまな手続きが必要になりますので、それなりの手間とコストがかかります。
2. 創業融資での評価
オオノ先生: あともう1つ。元手として金融機関からお金を借りるとしても、自己資金がゼロだったり1円しかないと借りづらいんですね。
創業者は実績がありませんから、お金を借りるにあたって何を評価されるかっていうと、自己資金を見られるんですよ。
扇子: 融資を受けるのに、どうして自己資金を見られるんですか?
オオノ先生: 自己資金の額で、コツコツ地道に経営ができる経営者なのかなっていうところを見られているわけです。ですから自己資金がゼロ、もしくは1円ってなると、「この人大丈夫かしら?」と思われてしまうわけですね。
扇子: 確かに、自己資金がない人は、お金遣いが荒いのかな?とか思っちゃいますね!
オオノ先生: そうですよね。創業者として金融機関にお金を借りに行くときには「このビジネスやるのが夢だったんです!」ってアピールするわけですけど、その返す刀で、金融機関からは、「その夢のためにどれくらいお金を貯めてきましたか?」っていうのを必ず聞かれます。
その時に「1円です」っていうのは、さすがに寂しいですし、なかなか信用も得られないと思うんですね。
一般的な創業融資の審査ポイント
一般的に創業融資には次のようなポイントがあると言われています。
1.自己資金:創業者が事業に投じる自分の資金の割合です。この金額が多いほど、金融機関はその事業へのコミットメントを高く評価します。
2.経験・能力:創業者の過去の経験や技能が、新しい事業で成功する可能性を示す重要な要素です。
3.返済可能性:事業が将来的に安定して収益を上げ、融資の返済が可能であるかどうか。
4.資金使途:融資を受けた資金がどのように使用されるか。具体的な計画とそれに対する見積もりが必要です。
これらのポイントの中でも、自己資金は特に重要です。
自己資金の割合が高いほど、金融機関からの信頼が得られやすくなります。
創業融資では一般的に、借入希望額の半分から3分の1は自己資金でカバーすることが望ましいとされています。
自己資金の存在は、創業者が自分のリスクを負う意志があることを示し、事業に対する自信と責任感を金融機関に
アピールすることができます。
また、自己資金が少ないと、金融機関からの融資が得にくくなるだけでなく、借入れした資金に依存することが多くなるため、
事業の自由度が低下する可能性もあります。