起業するなら株式会社と合同会社のどちらが良い?

扇子: 株式会社、合同会社、合資会社、合名会社…。一口に「会社」といってもいろんな形態があるんですね。

オオノ先生: そうなんです。一般的には株式会社を目にすることが多いと思いますが、実は、4種類あってそれぞれ特徴が違うんですね。

 会社の形態 

1.株式会社(かぶしきがいしゃ)

  • 最も一般的な会社形態
  • 株主が会社のオーナーで、株主は株を通じて出資
  • 株主は会社の経営に関する決定をする権利を持つが、経営は取締役(または執行役)に任される
  • 利益の分配は株主に対して配当として行われる

2. 合同会社(ごうどうがいしゃ)

  • 比較的新しい会社形態
  • 出資者(社員)は有限責任を負う
  • 株式会社に比べて設立や運営が簡便でコストが低い
  • 経営に関する意思決定は社員全員で行う

3. 合名会社(ごうめいがいしゃ)

  • 出資者(社員)は無限責任を負う
  • 少数の信頼できるパートナーで構成されることが多い
  • 経営に関する意思決定は原則として社員全員で行う

4. 合資会社(ごうしがいしゃ)

  • 無限責任社員と有限責任社員の両方が存在
  • 無限責任社員は経営に直接関与し、有限責任社員は出資のみを行う
  • 経営に関する意思決定は無限責任社員が主導する

扇子: あ、私、合同会社っていうのは見たことあります!

オオノ先生: 設立費用のための費用の少なさから、中小企業でも合同会社を選択するケースも増えてきていますから、合同会社を目にする機会も増えていますね。

 合同会社の設立費用 

合同会社の設立費用には下記のようなものがあります。

  • 登録免許税: 資本金の0.7%、または6万円のどちらか高いほう
  • 定款の収入印紙代: 紙の定款は4万円、電子定款は0円

合計で6万円から10万円ほどかかります。電子定款にすると印紙代が不要となり、コストを抑えることができます。その他の費用として、実印作成代、証明書の発行手数料、専門家への依頼料などがかかる場合もあります。

株式会社と合同会社の違い

扇子: そもそも株式会社と合同会社の違いって、なんなんでしょう?

オオノ先生: いくつかありますが、もっとも大きな違いは、株式会社は出資者と経営者っていうのが別で、合同会社は、出資者と経営者が同一人物っていうところですね。つまり、『所有と経営』が分離しているかどうか?というところですね。

扇子: 所有と経営が分離しているかどうかで、何が変わるんでしょうか?

オオノ先生: 「先頭多くして船山に登る」なんて言葉がありますけれども、経営者が多くなりすぎても経営は上手くいかないんですね。なので、経営者は必然的に少数になってくるわけです。
そうすると、合同会社は所有と経営が一致していますから、出資者も少数になることが多いんですね。少数の人が所有と経営を行っているわけですから、経営自体も柔軟に行うことができます。 定款自治なんて言ったりしますけど、定款に定めて、いろんなことを柔軟に決定していくことができるんです。

オオノ先生: 一方で株式会社は不特定多数の人が関わる形態ですから、定款で決められることっていうのは合同会社に比べて少ないわけです。様々な手続きを会社法という法律に則ってやっていかなければなりません。

 定款自治 
定款自治は、会社の基本的な規則を定款で決めることを指します。株式会社や合同会社などに適用され、特に合同会社ではその自由度が高くなります。合同会社の定款では「業務の執行」「利益損失の配分」「残余財産の分配」「定款の変更」などについて、誰がどのように決定するかを定めることができ、出資比率に依らない利益配分や意思決定方法も自由に決められます。これにより、会社の運営が柔軟かつ効率的に行えるのが特徴です。

起業するなら株式会社と合同会社のどちらがいい?

扇子: なるほど…。それじゃあ、「これから起業して会社を作ろう!」っていう人は、株式会社と合同会社、どちらを選択したらいいんでしょう?
出資者が経営者自身だけであれば、合同会社の方が良いんでしょうか?

オオノ先生: いくつか論点はありますけど、私は株式会社が良いと思いますよ。

扇子: えっ!なんでですか!?

オオノ先生: 大きな理由は、株式会社の方が説明しやすいからですね。

扇子: ??どういうことですか?

オオノ先生: 株式会社っていうのはとても有名な会社形態ですよね。一方で合同会社っていうのは少しマイナーです。普通の人にはなかなか伝わらない。

オオノ先生: 取引先と契約する場面を考えてほしいんですが、「うち、合同会社なんです。合同会社というのはこういう形態で…」なんて、いちいち説明してられないですよね?
取引先としては「よくわからん会社形態なんだな。 ちょっと心配だな。」ということで、もしかしたら、その契約がスムーズに進まないっていう可能性もありますよね。

オオノ先生: その点、株式会社というのは有名な会社形態なんで、株式会社のことが分からない人っていうのは、ほとんどいないと思います。
このスムーズさっていうのは、無視できないメリットなんですよ。

 合同会社のデメリット 

合同会社には下記に挙げるようなデメリットがあります。

信用度が低い: 株式会社と比較すると、合同会社はまだ知名度が低く、特に法人取引において信用されにくいことがあります。

多額の資金調達が難しい: 株式を発行できないため、大規模な資金調達が難しいです。資金調達は自己資金や借入に頼ることが多く、成長段階での資金繰りに苦労することがあります。

経営の混乱: 社員全員が経営に参加するため、意見の対立が起こると経営が停滞しやすいです。特に意見の調整が難しい場合、意思決定が遅れたり、経営方針が不明確になったりすることがあります。

このため、合同会社は特に少人数での事業に向いていると言われており、個人事業主が法人化を目指す際や、家族経営の中小企業で採用されています。資本調達が必要なく、内部での意思決定がスムーズに行える事業形態であれば、合同会社は柔軟かつ効率的に運営できます。

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公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
​トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験を持つ。
また、スタートアップ企業の育成・支援にも力をいれており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。

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