ビジネスの成長や運営を成功させるためには、資金調達が欠かせません。特に、創業の際や既存のビジネスを拡大する場合、融資の必要性は一層高まります。自己資金だけで賄うことが難しい初期投資や、事業の拡大に伴う運転資金を確保することは、企業にとって重要な課題の一つです。
先進的な事業内容は、その革新性ゆえに金融機関から理解されづらいという課題があります。しかし、しっかりとした計画書を作成し、熱意を持って事業の価値を伝えることができれば、融資を受ける可能性を高めることができます。
今回のコラムでは、NFTを活用した先進的なビジネスでも融資を獲得できた事例をご紹介し、その過程とポイントを探ります。
事例の登場人物と背景
AさんとBさんは、共同代表で創業することを志し、株式会社を設立しました。
Aさん
Aさんは誠実で丁寧な性格で、これまでも組合役員を務めるなど、周囲からの信頼も厚く、会社の管理を担当する予定です。
Bさん
Bさんは対人関係や業務管理が苦手でしたが、創作に対する強い情熱を持った芸術肌の人物です。ビジネス向きの性格ではないとご自身でもおっしゃっていましたが、その独自の芸術的視点と創造力は、今回立ち上げる事業には必要不可欠でした。
AさんとBさんは、お互いの強みを活かし弱点を補い合うことで、芸術作品を創り、それをNFTで販売する事業を始めようと考えていました。
AさんとBさんは、新たな事業を立ち上げるために自己資金として100万円を準備していました。この資金を基に事業のスタートを切ろうと計画していましたが、そのためにはさらなる資金調達が必要でした。
そこで、彼らは近くの日本政策金融公庫(以下、公庫)に行き、融資を受けられないか相談しましたが、結果は芳しくありませんでした。理由は事業内容が先進的で、具体的に理解することが難しかったからです。
また、芸術作品の価値を金融公庫が判断することもネックとなっており、融資を受けるには高いハードルとなっていたのです。
「なぜ先進的なビジネスは融資が受けづらいのか?」
飲食店や小売業といった既存のビジネスモデルが確立している業種は、金融機関からの評価が高く、融資を受けやすい傾向があります。これらの業種は長年の実績があり、その収益構造やリスクが比較的予測しやすいため、金融機関も安心して資金を提供できるのです。
一方で、革新的なアイデアを基にした新規事業や、ITを活用した先進的なビジネスは、事業内容やマネタイズ方法が理解されにくいことが多く、その結果として融資を受けるのが難しい現実に直面しています。特に、ビジネスモデルがまだ市場に定着していない場合や、新しい技術を取り入れている場合は、その将来性やリスクを評価するのが難しいため、金融機関の理解を得るのが一層困難になります。
公庫に難色を示されたこと以外にも、AさんとBさんは悩みを抱えていました。それは、自力では精緻な事業計画書を作成することができないという課題です。
これらの問題を解決するために、彼らは私たち融資の専門家に相談しました。
お話を伺うなかで、彼らの人柄や熱意を十分に感じ取ることができたため、融資獲得に向けてサポートすることとなりました。
融資を支援した方法
私たちは、AさんとBさんの融資獲得を支援にあたり、以下の方法を実施しました。
1.創業に必要な要件の確認
創業融資を受ける場合、まだビジネスを始めていないため企業の業績などは分からない状態です。その代わりに、金融機関は収益化できる見込があるか、また申込者自身に問題がないかを確認します。その前準備として、私たちもその内容を以下のように確認しました。
自己資金
AさんとBさんが用意した自己資金の150万円について、入手経路やその内訳を伺い、不透明な金銭でないことを確認しました。
事業に活かせる経験
Aさんの管理能力と豊富な信頼関係、Bさんの芸術的才能と創作に対する情熱についてより詳しくヒアリングし、今回の事業においてどのように役割分担し、それらが事業にどのように活かせるかを明確にしました。
信用情報
共同代表(AさんとBさんがともに代表取締役)の場合は、両名が審査対象となるため、各自個人の信用情報の取得や、納税証明書などの資料を用意していただきました。
2.事業計画書の作成
次に、以下のサポートを行いました。
①堅実な数値計画書
売上予測、コスト計算、キャッシュフロー計画について、AさんとBさんの頭の中にある目標値や収支予定を細かくヒアリングし、現実的かつ堅実な数値計画書を作成できるようお手伝いしました。
②熱意が伝わる説明資料
AさんとBさんからの入念なヒアリングを通じて、彼らの熱意や将来のビジョンを深く理解し、その上で、彼らの情熱と将来の展望を文章で説明することで、金融機関に対して強い印象を与えられる資料を作成できるようサポートしました。
以上の準備期間を経て、融資審査に耐えうる資料を用意してから申込に進みました。
近くの支店では難色を示された事もあり、創業融資に積極的な公庫のC支店、D支店のそれぞれに打診することにしました。
※公庫の申込先について、一般的には法人登記住所(個人事業主であれば営業所住所)の管轄の近くの支店へ申込むことになりますが、認定支援機関などの専門家からの紹介などの理由があれば、管轄外の支店への申込みも可能となることがあります。
支援の結果
C支店では、最初の支店と同様に難色を示されてしまいましたが、D支店からは社長から直接ビジネスの内容や、人柄そのものを見たいという好意的な反応を得ることができました。
懸念材料であったビジネスの内容については、D支店からも「確かに芸術作品というものを評価しがたい点はある」という意見が出ましたが、別の視点としてビジネスに対する思いや人柄が評価されたこと、先進的な取り組みについても金融機関が理解しやすいように丁寧な説明を行ったことで、結果的に800万円の融資を獲得することができました。
まとめ
今回のコラムでは、AさんとBさんが新たに事業を立ち上げる過程で直面した融資の課題と、その解決方法について紹介しました。
この事例から学べることは、先進的な事業内容が金融機関に理解されにくいという問題に対して堅実な事業計画書を作り、人柄や熱意を見て評価してくれる金融機関(または支店)に申し込むことで、融資可能性を高めることができる、ということです。
起業の準備や事業運営に力を注ぐ事業者にとって、時間を割いて自ら計画書を作成することはとても大変ですが、豊富な経験と知識をもつ専門家の支援を利用することで、自分の事業に集中しながら質の高い計画書を作成することができます。
また、私たちは、事業計画書の作成支援だけでなく、事業内容の理解に努め、熱意を積極的に評価しようとしてくれる金融機関に出会うためのお手伝いもしています。
融資について不安やお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください
※本コラムは実際にセブンセンスグループで支援したケースをもとに作成していますが、企業が特定されることを防ぐため、趣旨が損なわれない範囲で一部架空の内容を交えています