まだまだ続く、種類株式シリーズ。
今日は譲渡制限株式です。
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譲渡制限株式とは
譲渡制限株式とは、その株式の他社への譲渡が制限されている株式です(もはやネタ感ありますが、安定のトートロジー)。
具体的には、第三者への譲渡について株主総会や取締役会の承認が必要、という内容を定めておきます。
こうすることによって、会社の望まない人に株式が渡ってしまうことを防いでいるのです。
特にIPOの際には、株主がどんな属性の人物、法人なのかは、監査法人だけでなく、証券会社、東証からもチェックされます。
万が一、反社に関係する人が株主になっていたりすると、どんなにサービスが良くても、業績が良くてもIPOは叶いません。
譲渡制限の重要性
また、M&Aにおいても、意思疎通や連絡の取れない人が株主にいたりすると、ディールに大きな支障をきたします。
もちろんIPOの時と同様、反社関連人物の保有する株式の買い取りは買収会社も躊躇するでしょう。
したがって、株式に譲渡制限を付すことは、ガバナンス上非常に重要になってきます。
とはいえ、日本の中小企業は(スタートアップに限らず)、ほとんどの会社が、全ての株式について譲渡制限を課しています。
日本公証人連合会の定款雛形も、添付の写真の通り、すべての株式に譲渡制限を付けています。
定款記載の注意点
とはいえ、この定款の記載にも注意が必要です。
よくあるのが「会社の承認を受けなければならない」という記載です。
この場合、「会社」とは何か?というのが争点となる可能性があります。
株主総会なのか、取締役会なのか、取締役全員の同意なのか。
こうした解釈の余地がないよう、どこで承認を行うのかを具体的に明記する必要があります。
そういう意味では、この雛形の「取締役の承認」についても、取締役が複数名いる場合には争いになる可能性があります。
P.S.
またまた、受験時代の思い出を。
種類株式について規定している会社法は、2005年に成立・公布された、比較的新しい法律です。
会社法では、「すべての株式に譲渡制限を付していない会社を公開会社と呼ぶ」と規定しています。
会社法が公布されるまでは、上場会社のことを公開会社と通称していました。
それなのに突然、上場しているかどうかに関わらず、全ての株式の譲渡制限をしていない会社を公開会社と呼ぶとしたわけですから、当時は大きな混乱がありました。
誰かが「ウチは公開会社です」と言ったときに、「上場会社です」といっているのか、「譲渡制限をしていない株式があります」といっているのか、確認する必要がでてきたということです。
あれから18年たって、最近は上場会社を公開会社と呼ぶことは少なくなってきたと思いますが、どういった文脈で「公開会社」「非公開会社」と言っているのかは常に注意が必要です。