種類株式その⑥ 取得条項付株式 ファイナンス・トーク

皆さんお待ちかね(気のせい?)ファイナンス・トーク。

種類株式シリーズの第6回目は、取得条項付株式です。

取得条項付株式とは

第5回の取得請求権付株式でも少し触れましたが、

取得条項付株式は「会社が」株主から強制的に株式を取得できる条項が付いた株式です。

会社の意図により株主を排除できますから、効果としては、譲渡制限株式と同じように「意図しない株主への対応」ということになります。

譲渡制限を付けていれば、意図しない株主の手に渡ることはそもそもないんじゃないか、と思うかもしれません。

確かにそうなんですが、例外があります。

それが相続です。

相続のような一般承継による株式の移転は、譲渡制限の対象外のため、譲渡制限を付していたとしても相続人にわたってしまいます。

そして、その相続人が望まない株主(たとえば、スタートアップ投資についてリテラシーが低いなど)である可能性は高いです。

そうした場合に効果を発揮するのが、取得条項付株式です。

スタートアップにおける重要性

取得条項付株式は「一定の事由」が発生した場合に、その株式を会社が取得できます。

「一定の事由」 に「株主の死亡による相続の発生」を入れることで、相続人に承継されずに、強制的に株式を取得することができます。

なお、株式取得の対価は、金銭だけでなく、普通株式などでもOKです。

金銭の場合は財源規制があります。

スタートアップにおいて、取得条項付株式は相続以外にも重要な論点があります。

それがIPOの場面です。

IPOにおいては、種類株式を普通株式に変更することが、証券取引所から求められます。

そのため、IPOを事由とした取得条項を付しておくことが一般的です(対価は普通株式です)。

まとめ

いかがだったでしょうか。

前回の取得請求権付株式が株主にとって非常に強い権利だった一方、今回の取得条項付株式は、会社の意思で株式を取得できる会社にとって非常に強い権利だということがお分かりいただけたと思います。

次回は「全部取得条項付株式」について説明します。

「全部」が頭についているだけですが、取得条項付株式とのクリティカルな違いもあります。

次回もお楽しみに!

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公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
​トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験を持つ。
また、スタートアップ企業の育成・支援にも力をいれており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。