扇子: そういえば先生、創業融資時によく登場する「日本政策金融公庫」ってどんな金融機関なんですか?
オオノ先生: 日本政策金融公庫は政府が100%出資したいわゆる「政府系の金融機関」ですね。一般的には「公庫」とか「日本公庫」って呼ばれていますね。
扇子: 出資が日本政府というだけで、業務は普通の銀行とかと同じような感じなんですか?
オオノ先生: 実は、ちょっと違うんですね。
日本政策金融公庫は融資業務が中心
オオノ先生: 公庫の特徴は預金業務がなく、融資などの支援業務が中心というところなんです。国の「創業者を増やしていきたい」という意図をもとに業務を行っていますから、創業者にとてもフレンドリーな金融機関と言えると思います。
扇子: 創業者に優しいのはとても嬉しいですね!
オオノ先生: 最初に作るというより、「作りながら考えて動いていく」という感じですかね。事業計画を作ることによって、どんなことを考えるべきかが明らかになると思いますから。
日本政策金融公庫の役割
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主に対して融資を行う政府機関です。主な役割は、民間金融機関が融資しにくい分野や状況に対して、資金提供を行うことです。具体的には、新規創業支援、地域経済の活性化、災害復旧支援などを行っています。
日本政策金融公庫は、主に以下の3つの事業を行っています:
中小企業事業:中小企業の新事業育成や経営改善のための資金提供。
国民生活事業:個人事業主や小規模事業者向けの融資。
農林水産事業:農林水産業者向けの資金支援。
一般的に、創業を検討している場合は、日本政策金融公庫の国民生活事業の窓口に相談します。この部門は、個人事業主や小規模事業者の創業支援を専門としています。
オオノ先生: 民間の金融機関も創業には力を入れているんですが、やっぱり民間の経営ということもあって、リスクとリターンをどうしても天秤にかけるところはあるんですね。
ただ、そのリスクを下げるために、信用保証協会という保証をしてくれる機関をつけることもありますね。
信用保証協会
信用保証協会は、中小企業や創業者が金融機関から資金を調達する際に、債務の保証を行う公的機関です。これにより、金融機関はリスクを減らし、事業者は資金を借りやすくなります。
万が一、事業者が返済できなくなった場合、信用保証協会が代わりに返済し、事業者はその後協会に返済します。保証の対象となる事業者にはいくつかの基準があり、保証には信用保証料が必要です。
信用保証料は、金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会がその債務を保証するための対価として支払う手数料です。
信用保証料の計算方法は、融資金額や期間、事業者の信用リスクなどに基づき決定されます。保証料は、年率で表示され、事業者が金融機関に支払う利息とは別に支払う必要があります。
どちらから借りるのがいいの?
扇子: そうすると、フレンドリーな日本政策金融公庫から借りる方が良いのかなって感じがするんですけど、実際どちらから借りるのが良いんでしょうか?
オオノ先生: どちらかに限定する必要はないですし、私はどちらとも付き合った方が良いと思いますよ。
扇子: どうして、どちらとも付き合った方が良いんですか?
オオノ先生: それは取引金融機関を増やしていくことが、創業者にとっては重要な戦略になってくるからなんです。
取引する金融機関を増やすメリット
中小企業が複数の金融機関と取引することは、以下の理由から重要と言われています。
リスク分散:一つの金融機関に依存すると、その金融機関に問題が発生した場合に資金調達が困難になります。複数の金融機関と取引することで、このリスクを分散できます。
条件の比較:異なる金融機関の条件を比較検討することで、より有利な融資条件やサービスを見つけやすくなります。
関係強化:複数の金融機関と関係を築くことで、金融機関からの信頼を得やすくなり、将来的な資金調達がスムーズになります。
とくに、企業が業績不振の際などに金融機関からの支援が受けられないと、企業が“新たに”他の金融機関から資金を調達するのは、一般的には非常に難しいと言われています。そこで、あらかじめ複数の金融機関と取引関係を築いておくことで、緊急時にもスムーズに融資を受けられるようにすることが重要となります。