ビジネスを始めるなら個人事業主と法人どっちがいい? パート1

扇子: 先生!これからビジネスを始める方から、個人事業主としてスタートするか、法人を設立するかで、どちらが良いかって質問をいただくんですけど、どうやって決めればいいでしょうか?

オオノ先生: いくつかポイントがあると思いますが、まずは次のポイントを参考にすると良いと思いますよ。

 法人と個人事業主の違い 
法人とは、会社や学校、病院などの団体が、法律によって個人と同じように契約を結んだり、財産を持ったりすることができるように認められた組織のことです。法人は自然人(個人)とは異なり、法律が定める特定の形式とルールに従って設立され、権利や義務を有します。これにより、団体自体が一つの「人」として行動できるようになります。
一方個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人のことです。例えばフリーランスのように、自分で顧客を見つけてサービスや商品を提供する人がこれにあたります。

ポイント1 設立時の費用

オオノ先生: まず1つ目は設立の時の費用ですね。個人事業主であれば、そもそも設立っていう概念がありませんよね。開業届を出せばそこから個人事業主として開業できますから、費用が特にかからないというのがメリットかなと思います。
 一方で法人の場合は、合同会社であっても10万円ぐらい、株式会社であれば25万円ぐらいの設立費用がかかりますから、この設立費用というところでは、個人事業主の方が有利なのかなと思います。

 開業届とは 
開業届は、個人事業の開始を税務署に正式に通知するための書類で、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。提出期限は開業日から1ヶ月以内で、提出しないことに対して罰則はありません。ただし、青色申告で申告するには開業届に加えて、別途「所得税の青色申告承認申請書」を期限までに提出する必要があります。開業届を提出するメリットには、節税効果のある青色申告の利用、事業用の銀行口座開設、賃貸契約や融資の際の事業証明として役立ちます。
また、こちらも罰則はありませんが、都道府県税事務所への「個人事業税の事業開始等申告書」の提出も必要です。

 会社の設立に必要な費用 
会社の設立に必要な費用には主に次のようなものがあります。

1.法定費用
  定款用収入印紙代(紙の場合):
  紙の定款は印紙税法上の課税文書に該当するため、認証手続きの際に40,000円の収入印紙を貼付することが義務付けられて
  います。電子定款の場合は発生しません。
  定款の認証手数料(株式会社の場合):
  公証人による定款の認証が必要で、これに関連する手数料がかかります。手数料は資本金によって異なります。
  定款の謄本手数料(株式会社の場合):会社の登録事項謄本を取得する際に必要です。
  登録免許税:会社設立の登記に際して必要となる税金で、資本金の額によって異なります。

2.資本金
  設立時に必要な最低限の資本金は、法律によって1円以上と定められています。

3.会社印鑑および印鑑証明書の費用
  会社印鑑:代表取締役印などの印鑑を作成する費用で、材質やサイズによって価格が異なります。
  印鑑登録料:印鑑を法的に登録するための料金です。
  印鑑証明書:登録した印鑑が正式であることを証明する書類の発行に関わる費用です。

ポイント2 手続きの煩雑さ

オオノ先生: 2つ目は様々な手続きですね。個人事業主だとあまり求められていませんが、法人だと、例えば設立以外にも登記事項があったり、公告が必要だったりとか、色々手続きが定められています。この手続きの煩雑さという意味でも個人事業主の方が簡易な形態を取れるかなと思います。

 法人の登記とは 
法人の登記(商業登記)とは、会社の設立や変更事項を法務局に登録し、公に認めてもらう制度です。登記することで、会社の社名、本社所在地、代表者の氏名と住所、事業目的などの基本情報が公開され、法人としての公的な認証を受けます。これにより会社の信頼性が保たれ、取引や融資などビジネス活動が円滑に行われます。

 公告とは 
公告とは、会社や法人が特定の情報を一般に向けて公式に発表することです。主に、会社の決算情報、合併、資本減少など、外部の関係者や一般公衆に知ってもらう必要がある重要な事項を公開する手段として行われます。公告は法的な要求に基づいており、会社法などの法律によってその方法や内容が規定されています。公告の方法には官報、日刊新聞紙、電子公告などがあり、会社はこれらの方法を用いて情報を公開します。公告を行うことで、会社は透明性を保ち、取引の信頼性を高める効果があります。

ポイント3 社会保険

オオノ先生: 3つ目は社会保険ですね。法人、つまり会社だと社保加入が必須になってきますから、この社保加入におけるコストっていうのは法人のデメリットかもしれません。
ただ一方で、働く人からすると社保があるというのはメリットにもなりますから、これはどっちがメリットでどっちがデメリットとは言い切れないかなと思います。コストだけに着目すれば、社保は法人の方は少し不利かなと思いますね。

 社会保険の種類と会社の負担 
社会保険には主に次の5種類があります。
1. 厚生年金保険:労働者と事業主が折半して保険料を支払います。老後の年金、障害年金、遺族年金を提供します。
2. 健康保険:これも折半で、病気や怪我の治療費の一部をカバーし、高額医療費制度や疾病手当金などの給付があります。
3. 介護保険:40歳以上の労働者が対象で、こちらも労働者と事業主が折半して支払います。
       必要な介護サービスの利用を支援します。
4. 雇用保険:失業時の給付や再就職支援を目的としており、事業主の負担が労働者よりも大きいです。
5. 労災保険:業務上または通勤途中の事故や病気による補償を行い、これは事業主が全額負担します。

オオノ先生: 他にもポイントはあるんだけど、つづきはまた今度説明しますね!

扇子: お願いします!

アバター画像

公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
​トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験を持つ。
また、スタートアップ企業の育成・支援にも力をいれており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。