私たちが融資の支援をさせていただくお客様の事業には、ビジネスモデルがシンプルなものもあれば複雑なものもあります。
IT関連の事業では、技術的な要素はもちろんのこと、売上の発生形態やマネタイズの構造が複雑なケースもあり金融機関に説明することが難しいものも多くあります。
特に既存事業のビジネスモデルとは異なる新事業を始めようとする場合には、自社での前例がないだけに、どのように説明をすべきか悩ましいところでしょう。
このような場合には、既存事業における実績のアピールに加えて、根拠のある売上の数値計画を示すことが重要です。
金融機関は、新しいサービスがどれだけ売れる見込みがあるのかを知る術がありません。
ですから、販路の有無や見込み客の状況などから、できるだけ明確な売上計画を作る必要があります。
今回ご紹介するのは、ブロックチェーン技術をもとにしたITサービス事業を立ち上げるために4,000万円の融資を獲得した企業の事例です。
この記事をご覧いただくことで、金融機関がどの様な事業計画書を好むのか、そして、ご自身で融資の申込をされることのリスクも知っていただけると思いますので、是非、資金調達を検討するうえで参考にしてみてください。
新事業に必要な4,000万円の融資を獲得できたポイント
今回事例で融資を獲得できた理由は2つあります。
1つ目は、既存事業の直近の業績が良かったことです。
既存事業が好調であることは、既存事業の利益により完済が見込めるというだけでなく、新しい事業も同様にビジネスを発展させられる手腕が見込めるという意味でプラスの評価となります。
今回の事例では決算書等で直近の業績が好調であることをアピールできたことが、成功のポイントとなりました。
2つ目は、販路が開拓済みであったことです。
この事例企業の新事業では、既存事業の顧客がそのまま新事業の見込み顧客となる可能性がありました。新規に販路開拓をしなくても、既存事業の顧客にアプローチするだけである程度の売上を見込むことができたことも要因の一つでした。
ただし、その収益構造を理解するにはITシステムの特徴を理解する必要があり、その構造を資料で明確に示したことが成功につながりました。
それでは、実際の事例でこれらのポイントを確認していきましょう。
新サービスの開発に4,000万円の投資が必要
ご依頼いただいた企業は設立から数年が経過した東京都のIT企業B社。
ブロックチェーン技術を使ったサービスを展開されており、創業時からの事業は順調に伸びている状況でした。
更なる成長を目指して、自社の強みでもあるブロックチェーン技術を応用したセキュリティ関連の新サービスを展開することを決めたB社でしたが、開発に必要な人員を確保するための資金が確保できない状況でした。
ご相談いただいたのち、必要となる金額を試算したところ、外注費・社内人件費等で4,000万円が必要という状況でした。
既存事業の販路活用をアピール。融資方法も工夫。
まずはヒアリングシートにてB社の新事業の内容などを詳しく教えていただきました。
ヒアリングシートは金融機関に提出する資料を作成するための参考資料となるものです。
金融機関に説明をする上でのポイントとなる内容を例示していますので、こちらをご記入いただくことで必要な情報を網羅した資料を作成することができます。
ヒアリングシートをご記入いただいた後は、面談にて新事業についての構想をうかがいました。
B社の新事業では、既存事業で販売したシステムにカスタマイズをおこなってご利用いただく方式をとっていました。
また、システムそのものを販売するのではなく、ユーザー数に応じた利用料を徴収するというビジネスモデルでありました。
このビジネスモデルでは、既存顧客がそのまま新事業での顧客になる可能性が高いため、販路が開拓できているという点で金融機関から評価されやすいといえます。
一方、技術的な要素や収益構造については難解な部分もあるため、事業計画書の中で詳細な説明を加えていただきました。
これらをもとに60か月の数値計画に落とし込み、事業の収益性をアピールしていただくようアドバイスさせていただきました。
また、今回のケースでは協調融資ではなく、金融機関2行から別々に融資を受ける形をご提案いたしました。
私たちは、事前に金融機関に打診した際の反応などから、その時点で最も確度が高いと思われる融資の方法をご提案しています。
事業の内容だけでなく、そのタイミングでの金融機関側の事情など、一般的には把握しづらい情報も考慮してアドバイスを行っています。
これらの支援をおこない、B社は新事業に必要な資金調達に成功しました。
数か月間の開発期間を経てリリースされたサービスは、技術的な革新性もあり、その後もファンドや企業からの資金調達に成功するなど、拡大を続けています。
まとめ
今回は、追加融資で革新的なIT新事業を立ち上げた事例をご紹介しました。
B社のように専門性が高く、ビジネスモデルが複雑なために事業計画が作りづらいケースにおいても、私たちのような専門家を活用いただくことでスムーズに融資の準備を進めていただくことができます。
新事業で融資を受けられるかどうか分からない場合であっても、客観的なアドバイスをさせていただくことが可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
※本コラムは実際にセブンセンスグループで支援したケースをもとに作成していますが、企業が特定されることを防ぐため、趣旨が損なわれない範囲で一部架空の内容を交えています